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患者さんにとって少しでも安心して受診できるように、クリニックの雰囲気などお伝えしていきます。
うつには鉄が効く!?

以前に比べて心療内科領域でも栄養を意識される方が増えてきているように感じますが、栄養療法は薬と違って特定の決まった効果を発揮するものではないので、「鉄を飲めば◯◯に効く」(そもそもこの表現は薬機法に違反します)のような表現は情報の誤解につながるリスクがあります。
我々のように栄養療法を専門でやっていても、専門家の中でもさまざまな意見があり、日々勉強をしていかなければすぐに知識は古いものになってしまいます。
Contents
うつと鉄の関係性
さて、今日は「うつには鉄が効く?」という題で少しお伝えしておこうと思います。
「うつには鉄が効く」という表現は法律の点からも大きな誤解を生むことになるのですが、”うつ状態に至る要因の一つ”として鉄が不足しているということは原因を探る上で大きなポイントになることは事実です。
しかし、「うつ状態=鉄を飲めばいい」というわけではありませんし過大解釈されて「うつには鉄が効く」という表現をすることは問題になってしまいます。
医学書には書かれていない
「うつと鉄」の関係ですが、精神科、心療内科の教科書を引っ張り出してきても「うつ」と「鉄」について書かれたものは見当たりませんし精神科、心療内科分野では学会などでもテーマになることすらありません。
ですので、いくら精神科、心療内科の教科書を引っ張り出してきても「うつ」のと治療に鉄が有効だなどと書かれているものはありません。
「うつ」と「鉄」の関係についての情報は一般書籍やSNSなどをが中心だと思われます。
話はややずれてしまいますが、一般書籍やネットなどでは色々なところで「うつと鉄」についての情報が得られるのに、なぜ正書と呼ばれる医学書にはその情報が一切ないのか、この乖離はなぜなのか??
この情報の不均衡の原因は私にもわかりません。
これだけ「うつと鉄」の関係についての情報が出ているのであれば精神科の教科書でも取り上げられて然るべきではないかとすら思いますが、客観的なデータの得られない精神科という分野と論文や学会という権威主義の世界が新しい情報をなかなか受け入れない枠組みを作っているのかもしれません。
うつのメカニズムと鉄との関係
「うつと鉄」の関係に話を戻します。
「うつ」の一つのメカニズムとして脳内のセロトニンという神経伝達物質の不足が考えられています。抗うつ薬はこのセロトニンという物質を神経と神経の隙間に増やす作用のある薬です。
そこでセロトニンが足りていないのであれば、セロトニンを増やせばいいのでは?という疑問が出てきます。
(もちろん事はそう単純ではありませんが・・・セロトニンが不足していることがうつの要因であるとして話を進めます)
セロトニンを作るためにはトリプトファンというアミノ酸が材料として必要であり、トリプトファンをセロトニンに変換するための酵素は鉄の働きを借りなければ活性化しないのです。
女性の「うつ」と鉄の関係
女性、特に生理のある女性は毎月出血があるはずです。
そうするとその分血液を作るために鉄がたくさん使われます。
普段から意識して鉄をしっかり取っている方であればいいかもしれませんが、鉄をしっかり取っていなければ体に貯蓄されている鉄分はどんどんと減ってしまいます。
血液の鉄は酸素を運ぶという生命維持に一番大事な役割を担っています。
ですので、最優先の鉄すら足りなくなれば貧血になってしまいますが、貧血になっていないギリギリの状態で体を回していれば、もしかしたらセロトニンを作るために必要な鉄は不足してしまうかもしれません。
これが一番よくある「うつと鉄」の関係についての説明です。
私たちは血液検査でこの鉄の流れについて確認します
そして鉄分の補充が大切であることを説明します。
しかし、このようにわかりやすい方ばかりではありません。
特に、ある程度体内に鉄の貯蓄があるけど、鉄不足の症状が出ている方達がかなり多くいらっしゃいます。鉄不足の症状が出ているのに鉄が使えないのです。
例えば脂肪肝、慢性微細炎症、糖質過剰摂取、腸内環境の悪化、血糖調節障害、抗酸化力の低下、果てはピロリ菌感染までその原因はさまざまです。
ここがオーソモレキュラーの難しいところであり面白いところでもあります。
これらの原因を推測し、なぜその患者さんが鉄をうまく利用できない体になっているのか、どこをどう調整したら鉄を利用できるようになり、鉄不足の状態を改善し、そして「うつ」をよくできるか。
毎日色々な患者さんと出会って、色々なデータを読んでいるとその度にデータを読む難しさを感じていますが、それでも必ずどこかに答えはあるはずと信じてやっています。
まとめ|理想は薬に頼らない治療法
本当のことを言えば、精神薬なんか一切使わずに「うつ」をよくできることが一番良いのですが、そのためには今日お話ししたように「鉄」一つ取っても非常に色々と考えさせられます。「うつに鉄が効く?」は正解に辿り着けない落とし穴かもしれません。
血液検査の結果を読むのが一番難しいけれど一番楽しい作業でもあります。
でも本当に大切なことはデータを見ながら、きちんと患者さんの顔を見ることだと思っています。
難しいと思いつつもいつも血液検査というデータのパズル難題を解きながら患者さんたちが笑顔で卒業してくれたらいいなと思いこれからも勉強していこうと思います。
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